HEAT20は何故生まれた?深刻化する地球環境問題
HEAT20住宅/エネルギーと室内環境の質の両立
深刻化する地球環境問題
「深刻化する地球環境問題、そして東日本大震災で顕在化したエネルギーの安全保障などの観点から、日常の暮らしを営むために必要となる様々なエネルギーを削減し、有限な資源を未来に繋いでいく事は、私たちに課された重要な責務といえます。」と北海道立総合研究機構の鈴木大隆先生がHEAT20設計ガイドブック冒頭で記述したように、地球環境問題は、日本レベルだけでは無く世界レベルで当たり前になってきています。住宅の省エネルギー性能についての関心は、1980年の石油危機時に始まり、現在までの間で年々関心が大きくなっています。しかし、日本の住宅レベルは非常に低く、賃貸住宅や建売住宅、ローコスト住宅など、住宅性能よりも経済性を優先する住宅がまだまだ多いです。
20年前の外皮基準が最高?
住宅の外皮性能の基準は、1999年基準(等級4)以降、その性能は20年間変わらないまま現在に至っています。2020年にこの断熱等性能等級4を義務化するという話が国でありましたが、実際どうなったでしょう。国はこの案を白紙撤回としました。外皮性能とは、簡単に言うと「その家はどのくらい保温力のある断熱になっているのか」と言う事を数値化したものです。2018年12月3日、国交省の部会(有識者会議)で、2020年から義務化が予定されていた「省エネ住宅の義務化」を白紙撤回する方針案が了承されました。
もともと、大規模な建築物から省エネを進め、最終的には2020年以降に新築されるすべての家は省エネ性能(断熱性)を持っている住宅のみ建築されることになっていました。これはパリ協定など地球温暖化対策の一環とも位置付けられておりました。
2010年6月の「新成長戦略」や、2012年7月の「日本再生戦略」など過去には同様の方針が閣議決定されるほど重要な位置づけでした。
そして、2016年5月13日に「2020年までに新築住宅・建築物について段階的に省エネルギー基準への適合を義務化する」と閣議決定されていました。
省エネ義務化の白紙撤回
しかし、国交省の社会資本整備審議会 建築分科会 建築環境部会において、延べ床面積300㎡未満(約90.75坪未満)の小規模住宅(建築物)、つまりほとんどの新築戸建て住宅は省エネの義務化を見送るという考えで固まったのです。
HEAT20の取り組み
HEAT20の取り組み
欧米などでは、民間の関係団体が中心となり、国の制度や基準とは一線を画して、「望ましい姿」を民間主導で提案する取り組みが盛んに行われています。そして、このような国の基準を超えた世界を見据えた集団が、住宅において革新的技術を生み出しています。HEAT20は、このような取り組みをと言う想いから、2009年に有識者・民間企業によって「2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会(HEAT20/ヒート20)」がスタートしました。
エナジーベネフィットとノンエナジーベネフィット
HEAT20委員会での議論で、温暖地(6地域)を主に対象に、ノンエナジーベネフィット(NEB:室内温熱環境の質)とエナジーベネフィット(EB:エネルギー性能)の観点から、平成25年基準を上まわる外皮性能水準を2段階に分けて提案し、基準策定のモデルに利用されたきた自立循環型住宅プランを公開しました。
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外皮平均熱貫流率UA値
屋外にどのくらい熱が移動するかを表す指標が熱貫流率です。外皮平均熱貫流率とは、住宅から外部へ逃げる熱量を外皮全体で平均した値をいい、具体的には、壁、床、天井及び開口部からの熱損失の合計を、外皮表面積で除した値です。数値が小さいほど断熱性能が高い住宅です。